目次
CDO・最高デジタル責任者とは
CDOの役割
CDO (Chief Digital Officer / 最高デジタル責任者) は、企業のデジタルトランスフォーメーションを担う上級職のひとつ。その役割は主に以下の3点である。
- デジタルビジネスへの全社的な適応を推進 (デジタル・アジリティの獲得)
- 既存組織の改革と再編 (組織再編、人材獲得、働き方の改革)
- ビジネスモデルの変革 (デジタル化)
2018年9月に経済産業省がレポートした「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」ではCDOを『システム刷新をビジネス変革につなげて経営改革を牽引できるトップ人材』と定義付けられているが、ここでいう”システム刷新”は狭義的にレガシーシステムのリプレイスと捉えるのではなく、特定ビジネスをとりまくデジタル環境全体の変革、と考えるのが適切だろう。
CDOの必要性
CDOは、4年に1度パラダイムシフトが起こるデジタルビジネスの世界で、アジリティ高くこのデジタル変革を推し進める役割を持つ。下位組織が保有する大量のデータを解釈し、ビジネスモデルまで含めて変革をもたらすことが求められるのだ。
米国では、デジタルトランスフォーメーションの担い手として、あるいはより部分的なデジタル化の推進者として、2009年頃から設置された。本格的に増加したのは2013年頃からであり、中小企業や未上場企業も合わせると2014年には1,000名、2015年には2,000名を超えたとされている (ベイカレント・コンサルティング 書籍より)。
2018年に行われたPwCのサーベイでは、調査対象となったグローバル2,500社の上場企業のうち21%がCDO職を設置しているという。CDOを設置する企業は2016年まで急激に増え続けていたが、近年は漸増傾向にあるとしている。
CDOを新たに設置する企業が減り始めている理由としては、デジタルトランスフォーメーションに対するエグゼクティブの認識の変化がある。それは、デジタルトランスフォーメーションの変革の規模が全社に及ぶ大きなものと認識されるにつれ、CDOのような一人の上級役員がその責任を担うのではなく、組織横断的な変革やアジリティ(敏捷性)が生き残るためにより重要と考えられるようになったのである。
CDOは新しい職種であり、その任期も2年程度と短く、そのミッションや業務管掌は目まぐるしく移り変わるものと考えられる。またStrategy&は、変革が企業のコアケイパビリティとなった暁には、変革の旗印であるCDOという職種自体が消滅するだろうとしている。
CIOとの違い
CIO(Chief Information Officer / 最高情報責任者)はCDOと混同されやすい役職であり、実際に責任分掌が似通っているケースも多い。デジタルトランスフォーメーションにさしあたり、全社的な観点でデジタル戦略を統括するためにCIOの上位職としてCDOが設置されている場合もある。
CIOが主に、情報資産や基幹システム、IT部門等の管理・活用という役割を持つ一方、CDOはより全社的な観点から、組織変革やデジタルを用いたビジネスモデルの刷新にコミットするケースが多い。しかし、CIO・CDOの棲み分けは会社ごとに状況が違う、というのが実際といえるだろう。
デジタルトランスフォーメーションとは?
デジタルトランスフォーメーションについては以下の詳細記事を参照。
CDOのタイプ
CDOは、2015年〜2016年頃はマーケティングやセールス、流通といったビジネス系のバックグラウンドを持つ人材が多かった。
ところが、デジタルトランスフォーメーションにあたってはレガシーシステムの刷新や最新のテクノロジーを活用した業務プロセス改善などの重要性が高かったことから、近年では技術寄りのバックグラウンドを持つCIO人材や、技術に詳しいコンサルタントなどが採用されることが増えている。
CDOとしては以下の3つのタイプが存在する。
CMOタイプ
CMOや広告、クリエイティブ出身者、ブランディングの専門家など。
マーケティングやコミュニケーション、EC、物理的なプロダクトなどをIoTやAIなど最新のデジタルに適応させることを中心としている。
CIOタイプ
情報処理やITシステム、テクノロジーの専門家。
CIOの上位職として設置されるか、あるいは単にCIOの役職が変わっただけということも多いようだ。
革命家タイプ
自社の変革やビジネスモデル一新の旗印となる推進者タイプ。
スタートアップ企業やコンサルティング会社出身であることが多いようだ。時には、自社のビジネスの破壊を標榜することもある。
CDOの権限
2018年時点で、グローバル上場企業2,500社で設置されているCDOのうち54%が役員クラスのポジションとなっており、権限のレベルは2016年から上昇している。
これは、ほとんどの企業にとってデジタルトランスフォーメーションというアジェンダが戦略的に重要であるという認識の高まりを反映していると考えられる。企業のトップから任命された役員級の権限がなければ、ビジネスや組織の変革という大仕事を成し遂げることはままならない、ということだろう。
一方で、「デジタル」と「デジタルトランスフォーメーション (変革)」は別に扱うべきだと言われている。実際に、多くの企業では、「デジタル」ではなく「デジタルトランスフォーメーション(変革)」のための部門やリーダーが別途設けられている。
CDOの権限は以下のようなものであるべきとされている。
- CEO直下、もしくはそれに類する役員級のポジションであること
- 部門横断的な権限を持つこと
- 社内ファンドのような、自前の予算を持つこと
CDOのバックグラウンド
企業におけるデジタルト化の対象領域は広範なものであり、実態について統計的・網羅的に記述するのは困難である。ここでは、IMD と Bain&Company のレポートを引用して定量的に観測できる実態について紹介する。
2019年にIMDが報告したレポートによると、デジタルトランスフォーメーション推進の責任者・監督者となっているのはCEOがもっとも多い。
DX推進の責任者・監督者 | 割合 |
CEO (最高経営責任者) | 39% |
CIO (最高情報責任者) | 38% |
CDO (最高デジタル責任者) | 38% |
COO (最高執行責任者) | 29% |
CSO (最高戦略責任者) | 25% |
CDaO (最高データ責任者) | 22% |
CMO (最高マーケティング責任者) | 18% |
CCO (最高顧客体験責任者) | 15% |
その他・なし | 各1% |
デジタルトランスフォーメーションは、「影響する組織の範囲」と「変化の度合い」が大きく、ジョン・コッターらが提唱する伝統的な チェンジマネジメント の範疇では扱いきれないとされる。したがって、その影響度の大きさと難易度そして重要度の高さから、部門長クラスではなくCEOを始めとする上級役員CxOが自ら陣頭指揮を採っているのだと考えられる。
また、企業におけるIT化・デジタル化の責任者である CIO (最高情報責任者) やCDO (最高デジタル責任者) のようなポジションだけでなく、マーケティングやブランドを統括する CMO (最高マーケティング責任者) が変革を率いているのも興味深い点として挙げられる。
日本のCDO
日本では、SOMPOホールディングスや三井物産などでCDOを置いている。
また、一般社団法人 CDO Club Japan という組織には40名弱の人物が挙げられているが、同法人が運営する JAPAN CDO of the Year 2019 などではサンリオピューロランド館長なども挙げられており、必ずしもCDOであるとは限らないようだ。
シェアボスのCDO人材
シェアボスには、CDOシェアリングを提供しているエバーパーク代表であり、スポーツニッポンCDO江端浩人氏などが登録している。
江端 浩人 / 元MERY副社長、現在はスポニチCDO&事業構想大学院大学教授を兼任、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進
また、元ガリバーインターナショナル 北島昇 氏 (現在は電脳交通取締役) は中古車販売の企業で自動車のサブスクリプションサービスやCtoCマーケットプレイスなど斬新なソリューションを次々と生み出しただけでなく、エンジニア組織の立ち上げや人事制度改革など組織のデジタル化の中心的な役割を担った。
デジタルトランスフォーメーションには様々な立場の人物が主導していることから、マーケティング系・情報システム系・新規事業系などの上級役員もCDO候補となる。
CTO / リードエンジニア
また、上場企業やベンチャーでCTOやリードエンジニアを経験した人材も在籍している。こちらも月2回からフルコミットまで、相談次第ですぐにアサインできる。
CMO系
デジタル化の注力領域が商品開発やマーケティングにある場合、CDO人材のバックグラウンドとしてマーケティング・広告・MDなどマーケティング系の経験が求められる場合もある。
CIO系
デジタル化における重点領域が基幹システムや社内システムにある場合、CDO人材のバックグラウンドとして情報システム・エンジニア出身などCIO系の経験が求められることもある。
新規事業系
シェアボスには、デジタル系新規事業に携わった経験のあるハイクラス人材は多い。デジタル化における重点領域が新しいプロダクト開発や新規事業開発にある場合、このような人材がCDOに就くことも考えられる。
情報出典
本記事の執筆にあたって、以下のような情報を参考にした。
Strategy&、DBTセンター、ベイカレント・コンサルティング、ほか