シェアボスは、企業とボスたちのコラボレーションによって生まれるケミストリーを、もっともっと多くの方々に知っていただきたいと考えています。
今回はカーマンライン代表である 許 直人 氏の支援事例として、株式会社DeNA SOMPO Mobility 取締役 / 事業本部長である馬場 光さんへインタビューさせていただきました。
目次
プロジェクトスペック
契約形態 : 業務委託 (準委任)
商流 : 直接契約 (DeNA ⇔ カーマンライン)
契約期間 : 3ヶ月契約、随時更新 (最終的に8ヶ月まで延長)
就業条件 : 50%稼働 / リモートワーク可 / コーポレートアカウント発行 / BYOD (MDM条件)
ミッション : 新規事業の企画及び事業計画、フィジビリティスタディ、事業化承認、DeNAメンバーへの引き継ぎ
Anyca と Offical シェアカー について
「Anyca (エニカ) 」は、個人間でクルマをシェアするレンタカーとは異なるカーシェアリングサービス。DeNA SOMPO Mobilityが提供しています。
「Anyca Official シェアカー」とは、2019年8月にスタートしたAnycaの新サービスです。DeNA SOMPO Mobilityが所有する車の管理・運営を、オーナーがサポートすることを条件に、一定回数は無料で利用できる新しい仕組みです。
DeNAとフリーランスのコラボレーション
末松:
はじめまして!本日インタビューさせていただく末松です。
馬場氏:
はじめまして。DeNA SOMPO Mobility 取締役の馬場です。
直人さんに仕事を依頼したときは、DeNA の オートモーティブ事業部 Anyca 事業部長という肩書でした。
直人:
新規事業の開発支援サービスを提供しているカーマンラインの直人です。
馬場さん、ご無沙汰しております。
末松:
よろしくお願いします、本日インタビューさせていただく末松です。
今回はお引き受けいただき、ありがとうございます。
早速ですが、今回のプロジェクトでは直人さんにどんな依頼をされたんでしょうか。
馬場氏:
新会社であるDeNA SOMPO Mobility の設立にあたり、新しく大きなことをしたいと考えたことが相談のきっかけでした。
そこで、DeNAが運営する個人間カーシェアリングサービス「Anyca」の新機能の企画をお願いしました。
直人:
そうですね、最初は中島 宏さん(DeNA SOMPO Mobility 代表取締役社長 兼 DeNA 常務執行役員 オートモーティブ事業本部長の)からの相談でした。
「Anyca をスタートさせて3年、運営を通じて DeNA にはオートモーティブ事業のナレッジと、ビッグデータが溜まってきた。これらを活用して、シェアリングエコノミーの究極系を作ってみたい。」というお話でした。
末松 :
シェアリングエコノミーの究極系?
直人 :
はい。DeNAの構想は、「シェアリングエコノミーのダイナミクスで、無料でクルマを提供すること」サービス、という大胆なものでした。
馬場氏:
僕も中島から構想は共有されていたのですが、実現に向けて2つの課題がありました。
ひとつは、時間的な問題。投資の承認が行われる取締役会までの短期間で、ビジネスの骨子をきちんと作り上げなければならないという状況でした。
もうひとつは、リソースの問題。ITのイメージが強いDeNAですが、オートモーティブ事業部を立ち上げ、次々と革新的なサービスを発表していることもあって、モビリティ業界からもエグゼクティブクラスの人材が参画しています。
ただ、多くのプロジェクトがものすごいスピードで同時並行的に走っているため常に人材不足という状態。革新的なアイデアだけに難易度も高く、時間的・リソース的制約から断念せざるを得ないと考えていました。
末松:
そこで、かねてから DeNA 、Anycaとビジネス面での交流があったフリーランスの直人さんに白羽の矢が立ったというわけなんですね。
馬場氏:
はい。IT、モビリティ、そして事業開発。この3点を押さえていたところが決め手でした。
末松:
なるほど。それにしても「0円」でクルマを提供するなんて、実現したらすごくインパクトがありそうですが、そもそも可能なんでしょうか……?
直人:
正直、最初にお話を伺った時は実現可能性は五分五分くらいかな、と思ってました (笑)。
「0円でクルマ」というアイデア自体はエッジが効いていて面白いし、できるかわからないけれど「やってみたい」という好奇心のほうが強かったですね。
まず考えたのは、法的な規制が多い自動車ビジネスで、個人間カーシェア・リース・レンタカーなど提供スキームをどうするか。提供スキームを構築できたとして、自動車のビジネスはBSが重いので、調達とキャッシュフローをなんとかしないといけない。
100%の自信はなかったので、「とりあえず3ヶ月、やらせてください。そこでモノにならなかったら (クビを) 切っていただければ」ということでやらせていただきました。
末松:
3ヶ月目以降どうなるかわからないというのは、フリーランスとはいえドキドキしますね……。
馬場氏:
DeNA のオートモーティブ事業部には、野心と能力を兼ね備えた本当に優秀なスタッフが揃っています。基本的なビジネスモデルと方向性さえ決まれば、そこから先は形にできるという自信がありました。
直人:
そうですね、実際に基本コンセプトが整ってからの Anyca メンバーのチームプレイには驚きました。ラフな企画がどんどん形に、サービスになっていく。
他にありがたかったのは優秀な専門職のみなさんです。先ほど馬場さんも言っていましたが、クルマのビジネスは法的な規制や税制面で配慮しなければならない事項が非常に多い。
そういったセンシティブな部分の判断を、弁護士資格を持つ法務や、会計士など、優秀な人材が社内にいてすぐに相談できる。このような体制はビジネスモデルを作っていく上で非常に心強い存在でした。
フリーランスは確かに高い専門性や経験を持っていますが、DeNAのようなコーポレート機能の厚みは会社組織ならではの強みだと、独立してから強く感じるようになりました。
普通の人が壁だと思うところを飛び越えられる力
末松:
プロジェクトがスタートしてからはどうだったのでしょうか。
馬場氏:
C2CとB2Cと分かれていたところを亜流に攻める一歩を踏み出すフェーズを、経験のある直人さんに依頼することで、キャッチアップの時間が2週間ほど短縮できたと思います。
検討の早い段階で所有と利用の間を狙い、車代は企業が負担、それをシェアしていく仕組みを作ろうという企画の骨子が固まり、実際のビジネスとして可能であるかどうか、そのフィジビリティスタディからスタートしました。
直人さんとの取り組みは初めてだったのでチャレンジとも言えましたが、1〜2ヶ月一緒に働いてみて彼の仕事ぶりに確信を持ち、作るものを見てみたいとすぐに魅了されました。
直人:
ありがとうございます。
馬場氏:
直人さんのフィジビリティ力なのか、企画力なのか、とにかく「すごい」と言わざるを得ません。
法務や行政書士まで入ってくるようなレベルの知識や確認を要するものでしたが、さまざまな制限がかかっている理由を把握し、サービス化に導いてくれました。車の購入や所有に関してのルールの壁などであっても、同様です。
直人さんは、普通の人が壁だと思うところを飛び越えられる人だと思います。また、プロジェクト全体の整理能力も抜群に高いです。
アルバイトとして経営会議に出席、予算を勝ち取る
末松:
フリーランスが、そこまで組織の中に入って一緒に仕事をするというのは珍しいと思います。
馬場氏:
そうですね。DeNA社内での権限などを鑑みて、直人さんにはアルバイトという形でプロジェクトに加わっていただきました。また、これ以外に社内にリソースや知見がない領域については、カーマンライン社に業務委託で発注しました。
この方法がDeNAの仕組みの中で動き、コミュニケーションの取りやすい方法だったんです。
直人:
コミュニケーションという面でもそうですが、DeNAさんは上場企業なので、契約周りも含め管理体制がしっかりしているな、と思いましたね。
モバイルデバイスにはMDM (モバイルデバイス管理システム))が導入され、ワンタイムパスワードを入れないと重要なデータにはアクセスできないし、紛失時にはワイプ (データ消去)されるよう設定されました。
PCでも扱うデータの機密レベルによって保存方法が管理されており、不正利用や情報流出に対してもしっかり対策が取られている。e-larning でコンプライアンス研修やセキュリティ研修の受講が義務付けられており、私はセクハラ・パワハラ研修もちゃんと受けました 。
末松:
なるほど、外部人材を活用するときにはそこも大切ですね!
馬場氏:
直人さんには、経営会議にも出席してもらいました。
直人 :
そう、アルバイトという立ち位置で、まさか南場会長・守安社長にお目通り叶うとは思ってませんでした (笑)。
馬場氏:
ウチは「2ランクアップ(※)」なので (笑)。
直人さんの仕事で個人的に素晴らしいと思ったのが、経営会議での予算承認のため、経営陣へ向けた資料まで作成してくれたことです。
伝わりやすさを考慮しているのはもちろん、普段の私たちとの会話から様々なものを拾い上げ、この企画を実行する意義まで網羅されたアウトプットになっていました。
直人さんがこれまで社会人経験の中で培ってきた「根回し力」なのかもしれませんが、単に企画を提案するというだけでなく、企画の実現に向け我々に寄り添って仕事をしてくれる姿勢に感嘆しました。
※2ランクアップ……DeNA Quality(行動規範)のひとつ。自身の二つ上の視座を意識して 仕事に取り組むこと。
社内の力だけでは生まれなかった、斬新な企画が誕生
末松:
当初は3ヶ月という予定でしたが、最終的にはどうなったんでしょうか?
馬場氏:
経営会議に企画が通り、DeNAメンバーで自走できるまでフォローして欲しいということで、最終的には約8ヶ月間お付き合いいただきました。
外部人材に来てもらうならば、普段自分たち(DeNAメンバー)が考えるものとは毛色を変え、直人さんらしさを出して欲しいと、当初は考えていました。
ところが、途中から直人さんとウチのメンバーがチームとして企画に進めるようになって、直人さんひとりで作った当初案にDeNAらしさが加わり、どこにもないユニークなビジネスを生み出すことができたと満足しています。
末松:
まさに、企業とフリーランスのコラボレーションですね!
馬場氏:
はい。加えて、直人さんの守備範囲の広さによるところも大きいですね。「エンジニアリングからデザインまで」というようなIT領域に限った守備範囲の広さではなく、商権や法律、流通といったビジネスに関する知識と経験があるからこそ、なし得た成果だと思います。
末松:
そこはおじさんというか、割と歳いってますからね (笑)。
馬場氏:
直人さんは、何もないところからゼロイチで生み出す力に長けている人。このレベルでできるぼは、本当に稀有だと思います。また、人も大切にするし、連絡も大変丁寧です。こちらの意思を汲んでくれるんですよね。
後半、企画を現実化するためのフェーズでは、DeNAのメンバーが増えてきて動き方が難しいところはあったかもしれません。
直人:
最終的には、6〜8人くらいになってましたね。DeNAのメンバーって、優秀なのはもちろん、すごく能動的だと感じました。
自分から仕事を取りに来るし、「こうしたらどう?」「ここは考えた?」という風に促すと、自分ごとと自覚してガンガン自走していく。
シームレスに引き継げたとは思っていますが、自分の手を離れていくのがちょっと寂しくもありましたね。
大手企業も外部人材の活用に前向き
末松:
最後に一言、お願いします。
馬場氏:
企画に悩んだときには、また直人さんに相談したいと思います。次はもっと短期間で、ガツンとお願いしようかと (笑)。
今はDeNAの投資先を支援してもらっているのですが、それはDeNA中島からの紹介。彼もやはり直人さんの企画力に惚れ込んでいるのが大きく、また何かあったらお願いしたいという共通認識です。
今回の件もあり、我々としてはシェアボスのような外部のプロ人材活用を引き続き行っていく方針です。
専門家に聞けば一瞬で解決する問題が、2〜3ヶ月かけてもそのレベルまでいけないという経験を経てきたので、業界のプロに早くリーチするのは重要だと思います。
例えば、スポットや週1日稼働、今回の直人さんのようにアルバイトでもいい、働き方や雇用形態は関係なく、お互いにとって気持ちよく仕事を進められる形があれば、それが一番ですね。
末松:
本日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございました!
直人:
ありがとうございました!
また機会があれば、よろしくお願いします!
https://shareboss.net/p/boss/naoto-kyo/
事例でわかるボス人材活用のポイント
今回のケースでは、DeNA社が外部のプロフェッショナル人材を適切なタイミングでアサインし、適切にマネジメントしたことが成果につながったと考えられます。事例からわかる外部人材活用のポイントをまとめました。
- 突破力が必要なフェーズで、ボス人材に一旦任せる
- 経営陣に対する決裁・承認プロセスという明確なマイルストーン
- 受け皿となるチームを用意し、オーバーラップさせてしっかりと引き継ぎを行う
- クライアント側が法務や税務、人材リソースなどコーポレート機能でバックアップ
- MDMやクラウドを活用したセキュリティ管理
- e-ラーニングによるコンプライアンスの徹底