2021年6月1日 NTTデータ社にて、第一公共事業部のリーダー達と、3名のシェアボスによる事業開発をテーマとしたディスカッションが行われました。
NTTデータの第一公共事業部は行政、まちづくり、エネルギーといった公共性・地域性が高い事業領域を対象としてITサービスを提供する部門。省庁等のDXビジネスの要として、デジタル庁関連ビジネス等に対する方針の策定および事業創出を担います。
公共・社会基盤分野では、デジタル庁創設や大幅な規制緩和、省庁横断の政策など公共領域を取り巻く急速な環境変化が進んでおり、NTTデータでも公共統括本部など組織再編も含めた対応が進んでいます。そこで求められているのは、生活者視点のデジタル・ガバメントや、公共政策のDX化を全体最適の視点で捉えることで生まれるよりよい公共システムの実現です。
目次
ディスカッションの狙い
今回のディスカッションは、公共性や機密性が高くトラディショナルな方法論での企画立案やシステム開発が行われている領域を担うリーダー達が、ネットベンチャーの事業責任者達とのディスカッションを通じて最先端の事業開発や俊敏な意思決定、人材育成やマネジメントといった知見と刺激を得ることを目的として実施されました。
インターネットやスマートフォンが若者だけでなく高齢者にも浸透し、コロナ禍で極力対面を避けた生活が求められる中、行政・社会基盤分野に対する生活者のデジタルニーズも急速に高まっています。民間のネットベンチャーが行っている、潜在的ニーズを早く的確に捉え、機動的に仮説検証し、事業化するノウハウを取り入れることは効果的なのであはないか。ディスカッションを設計した西村事業部長・常盤企画統括部長の狙いはそこにありました。
ディスカッションの流れ
今回のディスカッションは、3名のシェアボスによるプレゼンテーションと、第一公共事業部のリーダーたちとのディスカッションを交互に行う形で進めました。単なる質疑応答ではなく、議論を発展させるためファシリテーターをアサインし、双方向の議論が埋まれるよう設計されています。
西村事業部長から現場リーダーへ向けたメッセージ
「皆さんは職場のエースだ。だけど、ひとつの業界に長く身を置くことで、そのエース達の同質化が進むことに危機感も持っている。共通項、公約数を探し納得するのではなく、ベンチャービジネスを経験してきた講師陣それぞれの個性、考え方の違いを感じ、楽しんで欲しい。」
ディスカッションの冒頭では、西村事業部長より現場リーダーたちに向け、激励のメッセージが投げかけられました。NTTデータのような巨大企業のリーダーが、同質化に危機感を持ちブレイクスルーやイノベーションに本気で取り組もうという意気込みが感じられ、同席した私も熱くなりました。
セッション1. Marketing New Normal
ディスカッションは、アタラシイヒ やまざきひとみ 代表による講演からスタートしました。アメーバピグやC CHANNELといった新サービスを立ち上げ、次々にヒットを生み出したやまざき氏が生活者の変化をどのように補足し、マーケティングをおこなってきたのか。
大きなトレンドを説明する講演のあとに続くディスカッションでは、市場の変化をどう分析するのか、撤退基準はどのように設定するのか、仮説が正しかったのかどうかはどう検証するのか、といったかなり具体的な議論が行われました。
リーダー達の関心の高さから、公共野でもC向けのマーケティング手法に対するニーズが高まっていることを実感しました。
セッション2. ネット業界から見た自動車産業
続くセッションでは、Weavlinx 田中慎也 代表を中心に「ネット業界から見た自動車産業」というテーマでディスカッションが行われました。
田中氏は DeNA にてヤマト運輸との共同プロジェクト「ロボネコヤマト」の事業責任者を勤めた人物です。第一公共事業部では国土交通省などをクライアントとして、自動車に関連する行政サービスを手掛けていることもありディスカッションは白熱。
自動車産業を取り巻く市場全体の動きや、車検や名変といった行政手続きのデジタル化、MaaSなどビッグデータ領域、自動運転/AI技術の状況といった専門的な領域で議論が交わされました。
セッション3. トラディショナルな組織のデジタルトランスフォーメーション
最後のセッションは、シェアボスの代表である私 (岡村直人) が務めさせていただきました。
私は、ガリバーインターナショナル (現在は株式会社IDOM) という店舗中心の企業にて、自動車のサブスクリプションビジネスの立ち上げを手掛けた経験があります。その際に行った組織づくりや制度設計、ビジネス構築、グロース手法などについてお話させていただきました。
ディスカッションパートでは、人事制度設計のあり方やステークホルダーの巻き込み方、ビジネスが計画どおり進捗しない場合の事業責任者としての立ち回りなど、事業運営の具体的な部分についての議論が交わされました。
総括
最後の総括では、各メンバーから今回のディスカッションを通じて得た気づきや学びについての発表がありました。
公共・社会基盤領域は、セキュリティ、可用性、法律上の制限、公平性など、事業を取り巻く制約や要求がとても多い中、民間ビジネスのようにトライアンドエラーを繰り返したり、スモールスタートを行ったりといった手法を単純に取り入れることはできないかもしれません。
それでも、生活者ニーズやマーケットニーズを積極的に捉え、経済合理性をもって計画し、俊敏にシステムを開発していくという事業開発の根本は民間も行政も本質的には同じなのだという気づきが得られました。
また、次々と予想外のことが起こり、軌道修正を求められる事業開発では、それに携わる人の思いや熱意が非常に大切なのであるということを参加者・講師の双方が再確認できる場となりました。
シェアボスは、デジタル系・ネット系の人材が中心となって組成されていますが、彼ら・彼女らの知識経験が活かせる場はITビジネスだけではないと考え、その知見を広く活用するために運営しています。
今回のような異業種コラボレーションがもっと活発化し、デジタルビジネスにおける最先端の知識やノウハウが日本全体に普及し、それによって経済・社会の発展に貢献できればと考えております。
それでは、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。