【ボス活事例】ミズノ有志コミュニティ× DX LAB.主席研究員兼パナソニック事業開発リード・山田亮氏

編集部より
シェアボスは、企業とボスたちのコラボレーションによって生まれるケミストリーを、より多くの方々に知っていただきたいと考えています。

今回は山田 亮氏の支援事例として、大手総合スポーツ用品メーカーでのオンラインセミナー実施レポートを掲載させていただきます。

ミズノ有志によるコミュニティ発足

ミズノは、大手総合スポーツ用品メーカーです。最近、水着や陸上ウエアの素材を採用した独自開発のマスク「マウスカバー」のニュースも記憶に新しいところ。

そんな同社では、新たな研究開発拠点の建設が予定されています。この拠点のオープンを前に、ハード面のみならず、ユーザーとの共創環境の構築、社内風土などソフト面の改革を求める声も挙がっているといいます。

そこで立ち上がったのが、社内有志によるコミュニティプロジェクト。

社内外のコミュニケーションを通じて「スポーツの力を通じてより良い未来をSOZO(=想像、創造)する」をミッションに、部署や会社の垣根を超えて活躍する有志社員を増やしていきたいというのがその狙いです。

先行して始動している社内コミュニティでは、すでに部署や年次を超えたメンバー同士のコミュニケーションが生まれているといいます。

ミズノ× DX LAB.主席研究員兼パナソニック事業開発リード・山田亮氏

その流れを外部人材との交流によってさらにドラスティックなものとしたいと考えたミズノさんから、今回シェアボスに相談が舞い込みました。

そして白羽の矢が立ったのが、パナソニック株式会社の有志団体「One Panasonic」の共同代表を務めるボス・山田 亮氏。

山田氏は現在、株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所主席研究員であり、パナソニック株式会社に従事する傍ら、One Panasonic共同代表を務めています。

画像出典:FASTGROW

コミュニティづくりをスタートしようというミズノの皆さんにとって、その目標ともいえるOne Panasonicの共同代表が山田氏であり、コミュニティ運営のノウハウから社内外連携の取り組みなどを直接聞けるのは貴重な機会です。

こうして、ミズノの社内コミュニティのこけら落としミーティングの目玉として行われたのが、今回のセミナーなのです。

セミナー

One Panasonicとは何か

パナソニックは、世界27万人の社員を有する大企業。内定者さえも入社後は各地に離れ離れになると、二度と会えないこともあるそう。そんな内定者同士の懇親会がコミュニティの生まれるきっかけになったといい、2012年の会社合併を機に、有志で結成されたのがOne Panasonic。

組織を越えて個人をつなぎ、一歩踏み出す個人をつくること、クロスバリューイノベーションを実現すること、この2つをミッションに掲げて活動する有志団体です。

ベンチャーがスピーディーにチャレンジを進めていく一方、縦割りになりがちな大企業では特有の課題が生まれてきています。それを解決したいという同じ志をもつメンバーによって組織されたこの団体は、現業をさらにドライブするため、自分自身の可能性を広げ、結果として会社に貢献するためにスピード感のある活動をしているといいます。

「大企業の強みは、有形無形の資産を豊富に持っていること。ブランドや技術、優秀な人材、歴史に信頼といった資産があれば、大企業がベンチャーに負けることはないと多くの人も語っています。ですが、それを活かせないのはなぜか。つながっていないからだと考えております」と語った山田氏の言葉に、ミーティングツールのTeamsのチャット上では共感のコメントを投稿する参加者も見られました。

実際の活動事例

同じ課題感を持つ有志のメンバーが集まり、“つながり”を作り上げるために何を行ってきたのか。これまでに行ってきた実際の取り組み事例をもとにお話しいただきました。

社外で活躍するビジネスパーソンやパナソニックエグゼクティブとのイベントやワークショップは、参加者の多くが興味を持ったよう。山田氏は「意欲ある若手と会話したいというエグゼクティブの意思と経営戦略を重ね合わせる企画を提供することで、有志活動に共感、そして参画してもらうことができた」と話しました。

7年間で全国各地で50回以上の取り組みを行い、社内外メンバーは7500名まで増加。全体での活動以外に、ハッカソンや女子会、有志による社員限定の「モノ博」など、多くの分科会も立ち上がっているといいます。

「一つひとつは小さな活動でしたが、エグゼクティブ、ミドルマネージャー、とダイレクトなコミュニケーションを重ね、社歴が浅いタイミングからでも経営者の視点を得ることができる、新しい知識、発見ができる、とうわさが広がり、多くの人を巻き込むまでになりました。

現業の部門内では予算が付かないものの、自分はこれがやりたいという思いを形にしてそのような場で発表することで、エグゼクティブや先輩社員のフィードバックも得て、部門に戻って再度チャレンジするということも増えています」

有志活動のあるべき姿

「有志活動は、会社と社会との境界線にあり続けるべき」だという山田氏は、先頃行った在宅勤務に関するアンケートの例について話しました。

One Panasonicに共感する仲間同士で、在宅勤務開始から数日でオンラインアンケートを実施し、翌週には数百名の結果とその状況報告までを終えたといいます。

「社内で同様のことを行う場合には、質問項目や対象者などその全てのプロセスで承認が必要となるためにひと月以上かかる可能性もありました。有志だからこそのスピード感を持って行動し、得たデータの傾向をまとめ会社へ提出した結果、会社としてもアンケートを一部参考にして社員へのアセスメント調査を行ったと聞いております」

有志でアンケートを実施した共感者は現在、会社の重要なミッションをリードするポジションに就いているそう。やりたいと声を上げ、実際に有志として活動する中で、自ら望むキャリアを得るケースも少なくないようです。

これから活動を進めていくミズノの有志メンバーに対し、「世の中にとって正しいとされ、会社にとって有益な情報になるという仮説があるのであれば、有志団体はまずやってみればいいと思います」と語りました。

コミュニティ拡大のステップ

順調にその活動を広げているように思えるOne Panasonicですが、その道のりには紆余曲折あったそう。ステップを経て、今の形へと行き着いたといいます。

最初のステップは「熱量が高く、同じ課題意識を持つ層と繋がる」こと、そして第二のステップは「人数を持って理解あるトップ・ミドルへ働きかける」こと。

山田氏は、コミュニティの輪を広げるためには「社内のどのポジションにどのタイミングで働きかけて仲間に引き込むかを戦略的に行うべき」だといいます。

One Panasonicとは何が得られたか

有志活動は、仕事と一線を画しています。
したがって、会社から有志活動で評価を得るというのは難しいものの、「モチベーション向上への寄与」は大きなものとなっているようです。

「今いる場所だけでは気づけない、自分のWILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(やらなければいけないこと)に気づくことができ、自己効力感が生まれ、モチベーションが生まれる」といいます。

社内への還元

また、社内への還元も顕著であり、One Panasonic総参加者数3500人に対して行ったアンケートでは、参加したことによって行動や意識が変わったと感じている社員は90%以上に上ったそう。

「自ら手を挙げて異動する人や新規事業に挑戦する人、退職を思いとどまる人も増え、組織内活動も活性化も起こっています。また、One Panasonicがあったから入社したという人も増えています」

中には、パナソニックを卒業して社外で活躍していた著名な人材が「若手が元気があるなら、それは希望だ」と出戻るケースも少なくないそう。ミズノの参加者の中でもこれに注目し、自社に取り入れたいとの感想も出ました。

また昨年、コミュニティでのアイディアを一部反映した企画が立案からたった1年で実質事業化したプロジェクトが社内の年間商品表彰を受賞。

いつしか社外からの評価も多くなり、One Panasonic の発起人である濱松誠は 日本の大企業50社以上が参加する「One Japan」も発足し、大企業との共創プラットフォームとして平成30年日本オープンイノベーション大賞、日本経済団体連合会会長賞を受賞し、活動のコンセプトはPanasonicのみならず他企業へも波及し続けています。

One Panasonicの課題と今後とは

7年経った現在、One Panasonicの本質的な価値とは何なのかを改めて振り返っているところだといいます。

「社内でインパクトを出すためには常に外部環境と内部環境の整合性を問いただしていく。そのために有志団体ならではの“ゆらぎ”を提供し続けたいと考えています」という山田氏。

参加者へ向け、「課題は外部環境の変化によって変わります。皆さんは、やりたかったことは何か、なぜやるのかを常に考え続けてください」と熱く語りました。

山田氏の「アクションを起こすためには、自分がやってみること。一歩でなく、半歩でもいいんです。やっていくうちに色々なコメントがあるかもしれませんが、成果は全て渡せばいい」の言葉は、セミナー後に行ったアンケートで印象に残ったと書いている参加者が多く見られました。

質疑応答

時節柄、対面での講演実施は行わず、オンラインでの開催となった今回のセミナー。
オンラインならではですが、講演進行中からチャット上で、聴講者からの質問やメンバー同士のコメントでのやりとりがなされました。

後の質疑応答タイムでは山田氏がそれに答える形で、多くの参加者と対話。ミズノの有志メンバー中の新入社員の方と山田氏のやりとりも起きるなど、活発なコミュニケーションの場となりました。多くの質問が挙がった中から、いくつかご紹介します。

Q. 本業と有志活動の両立は大変なのではないでしょうか。 モチベーションの維持はどうしていますか?

A. 実際、大変なことももちろんあります。ですが、興味があるから自ら手を挙げて行動しているので、やっている最中は楽しんでいますね。“やりたい”という原動力が、最も大切ですね。

Q. 意識や行動の変革の結果、変わったことはありますか?

A. 肌感ではありますが、私が会社が注力していると感じるプロジェクトの中にほぼOne Panasonicに共感してくれるメンバーがいるようになってきたことがわかりやすいところですね。また、こちらも個人的な感想ですが、通常より役職につくスピードが速いと感じます。

最後に

今回のコラボレーションの橋渡し役となったシェアボス代表の直人からもご挨拶。

「一人ひとりの主体性は小さいけれどもつながることで大きなうねりになり、それによって会社が、日本が、そして世界が変わっていくはずです。今回のコラボレーションは初めの一歩ではありますが、いずれ大きなものとなり、変革を生み出してくれると信じています。

シェアボスもデジタル×リーダーシップの力で、皆さんの新たな動きを応援できればと思っています」

そして、今回の締めくくりとして山田氏から最後に語られたのは、「自分の旗を上げて、アクションを起こす」ということでした。

「仕事は苦しいものですが、自分の旗を上げて突き進んでいるときは本当に楽しくなるんです。これをやりたいという希望と現業のギャップとの整合性を取りながら、旗を上げて進んでいくことは楽しいだけではなく、自分の人生を自分で選択しているという実感が湧いてきます。これはとてもハッピーなことです。小さな一歩でも構いません。明日からできることを自分なりに考えてアクションをしていただければ」

現役で大手企業に在籍し、社内外で活躍するボスである山田氏のこの取り組みはまさにそれを体現しています。そして、参加者の皆さんにとってはこのセミナーに参加されていたことが、その一歩となったと思います。

今回、各地にあるミズノの有志社員60名以上が参加。韓国拠点からもメンバーも出席いただきました。場所の制約がないからこそ、複数拠点の方々に参加いただくことができました。

事後に行われた参加者アンケートにおいて、今回の講演への評価は5点満点中4.2点をマーク。満足度の高いものとなったようです。

この取り組みを皮切りにスタートしたミズノの有志コミュニティ活動。いずれ、One Panasonicとともに共創する日も遠くないことでしょう。
今回の取り組みは初めの一歩ですが、シェアボスもデジタル×リーダーシップの力で、この新たな動きを応援していければと思っています。

今回登場したボス

山田 亮 / DX LAB.主席研究員兼パナソニック事業開発リード、理論と実務の両面からDXを推進

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所主席研究員であり、パナソニック株式会社に従事し、有志団体OnePanasonic共同代表も務める。約15年IT業界に身を置く傍ら、研究員としても国内外企業20社のDXの崖を調査。理論と実務の両面からDX推進をリードするボス。

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