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VPoE とは? 役割と業務内容
VPoEとは「Vice President of Engineering」の略で、エンジニアリング部門のマネジメント責任者を指す。米国では2000年代前半から設置する企業が増えだした役職だが、日本での知名度はCTOと比較して低い状態が続いていた。しかし、2010年代後半からメルカリ等のベンチャー系テック企業で導入されたことを契機に、本邦でも注目を集めている。
一般的にCTO(最高技術責任者)と二頭体制をとるケースが多く、CTO以上に、エンジニアの”組織面のマネジメント”に注力するのがVPoEだ。エンジニアが働きやすい環境の整備、人材育成、チームビルディング、人材配置の最適化、採用活動、エンジニアリング組織の社内外でのプレゼンス向上、などが主な管掌範囲となる。
実際の業務としては、働きやすい環境作りのためのツール・マシン選定、労働時間や場所等の職務規定の策定、評価制度の策定、エンジニア組織のカルチャー醸成、メンバーの目標設定、イベント参加や書籍購入などの学習機会の創出、採用面接の実施、など非常に多岐に渡る。
VPoEが必要とされる背景
技術のトップとしてのCTOとは別に、組織の長としてVPoEの必要性が増している主な背景として、以下3つが考えられる。
DX化の波
1つは、企業がエンジニア部門をどのような部門と捉えるか、という経営的な観点の変化だ。従来IT部門には、既存業務のシステム化や効率化の推進が求められるケースが多かったが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れの中で、IT部門はコストセンターから、イノベーション部門ないしプロフィットセンターである、という認識が広まってきた。会社の中で、技術部門が中心となり革新的な成長を生み出すには、その土壌=組織の安定化・進化が必要になってきたのだ。
エンジニア組織マネジメントの難易度向上
背景の2つ目は、エンジニアリングの専門性の細分化、働き方の多様化、それに伴うマネジメント難易度の向上だ。開発環境・技術スタックの多様化が進み、現在では、上司と部下のエンジニアが同じ専門性を有しているとは限らない。同時に、リモートワークの導入や、ニアショア開発・オフショア開発など開発体制の選択肢も広がっている中で、エンジニア組織のビジョンを明確にし、継続的に組織成長を続ける仕組み作りが必要とされている。この組織開発を率先するのがまさにVPoEの役割だろう。
エンジニア採用の難易度向上
3つ目は、シンプルに”エンジニア採用強化”の側面だろう。日本のIT人材、特にエンジニア不足は深刻で、どの企業も採用に苦心する日々が続いている。エンジニアが働きやすい環境を作ることはもちろん、エンジニア採用の責任者を多忙なCTO以外のトップ人材=VPoEに任せられるメリットは非常に大きいだろう。もちろんCTOが採用の最終判断を下す企業もあるだろうが、戦略的なエンジニア採用をリードするためにVPoEを設置した、という企業も多いだろう。
CTO、VPoP、VPoTとの違い
VPoEと近いポジションとして、CTO、VPoP、VPoTが存在する。ここでは各ポジションの役割について簡潔に解説し、比較を通してVPoEの特徴を明確化したい。
CTO
CTO(Chief Technology Officer、あるいはChief Technical Officer)は「最高技術責任者」と訳され、企業の技術部門の総責任者・担当役人を指す。CTOは、主に技術的な方向性、研究開発を監督するポジションであり、CEOやCFOなどと同様、経営レイヤーの一員として企業の長期的な技術戦略を立案・執行する権限を持つ。
VPoEが組織マネジメントにフォーカスした役職であるのに対して、CTOは技術に特化しているという棲み分けがある。会社の規模やフェーズによって管掌は異なるが、CTOが打ち出した技術的な方向性を、組織的に実行可能な状態にするのがVPoEと考えると分かりやすいだろう。
VPoP
VPoP(Vice President of Product)は、企業のメインプロダクトの最高責任者であり、製品・サービスの品質・成果の全てが責任範囲となる。企業によっては、PO(プロダクトオーナー)やプロダクトマネージャーと呼ばれるケースもある。
プロダクトの企画開発ディレクションの経験者が就任することが多く、企画立案から予算管理、要件定義、開発〜リリースまでの一連のプロセスを高いレベルでマネジメントするスキルが求められる。VPoEやCTOと比較して、より製品に近い場所で立ち回ることが求められる点が特徴的だ。
VPoT
VPoT(VicePresident of Technology)は、CTOが定めた戦略に基づき、実践的に開発、運用をリードする役職であり、企業によっては、テックリードやアーキテクトと呼ぶ場合もあるポジションだ。CTOやVPoEと比較してより現場レベルでのコードレビューやアーキテクチャ選定、開発環境の最適化に務める点が特徴的だ。豊富な技術的なノウハウが求められる他、他部署への説明スキル、自チームのリーディングスキルなど、幅広い現場力が必要となる役職といえる。
VPoEを導入している日本企業
日本国内では2017年4月にメルカリがVPoEを設置したことを皮切りに、新興テック企業を中心に導入が加速している。ヤフーやエムスリーといったメガカンパニーから、スマートニュース、SmartHR、ラクスル、アカツキなど、ユニコーンないしそれを目指す企業群も、組織面からエンジニアを強化するためにVPoEを設置している。
VPoEに求められるスキル
これからVPoEを採用しようとする場合、あるいはVPoEを目指す場合、とのようなスキルの有無に注目すべきだろうか。会社ごとに責任範囲が異なるケースが多いが、ここでは一般的にVPoEに必要とされるスキルセットを紹介する。
高度/大規模なプロダクト開発の経験
現在日本で活躍するVPoEの多くは、新卒で入った会社でそのままその職に上り詰めた事例は少なく、ほとんどが他の大企業や先進的なテック企業で十分な開発経験を積んだ末にVPoEにヘッドハントされているケースが多い。十分な経歴が存在するか否か、はまずチェックしたいポイントになる。
開発組織のマネジメント/採用スキル・経験
開発経験は豊富だが、いわゆる一匹狼タイプの天才エンジニアはVPoEに適性があるとは言えないだろう。体系だったマネジメントノウハウとその実践の有無もまた重要で、とくに昨今では”採用に強い”というポイントもVPoEに求められる要素だろう。
コーチング/チームビルディングに関するノウハウ・経験
上述のマネジメントにも通じるが、メンバーとやりとりする機会も多いVPoEは、具体的なコーチングスキルや育成ノウハウが求められるケースも多い。組織の先頭に立って、メンバーの力を最大化するための環境作りができるか否か、という点は重要になる。
多数のステークホルダーとの折衝能力
エンジニア組織のメンバーとはもちろん、CTOや他の経営層、あるいは社外へのプレゼンや採用広報など、VPoEが関わる領域・人は多岐に渡る。これらをこなすコミュニケーション能力もまた、求められるスキル、と言えるだろう。
VPoEの年収
設置している企業が少なく、また採用要件が厳しいこともあり、VPoEの年収の平均値というのは実態がわからないのが実情だ。企業の規模やフェーズによっても異なるが、CTOと同水準と考えも、日本国内では年収1,000万円〜3,000万円程度となるケースが多いと想定される。
VPoEが必要な企業
では、どのような企業でVPoEが必要なのだろうか。既にCTOないしそれに準ずる開発マネージャーが存在し、これからエンジニア組織を拡大・強化していこう、と考えている全ての企業にとってVPoE職の設置や、同等のスキルがあるコンサルの導入は有効に機能するだろう。
伸び盛りのベンチャーはもちろん、旧態依然とした開発組織を刷新する大企業のDXフェーズにおいても、VPoE人材は強力な役割を果たすと考えられる。
シェアボスでVPoEを探すという選択肢
一般的にはエグゼクティブマッチングサービスやヘッドハントを使ってVPoE人材を探すことが多いが、こういったサービスのエージェントは、企業ごとの状況や特性を理解した上で、マッチする”エンジニア組織のプロ”を探すレベルが十分高いとは言えず、企業の経営陣が満足できるレベルのマッチングが成就しないケースが多い。
また、VPoEになり得る人物が、そもそも人材市場に出回っておらず、採用活動を委託しても高額な費用と時間を無駄にしてしまう可能性があることも懸念点だ。
そこで、一般的な採用より“早くて確実”をウリにしているシェアボスで、スポットコンサルとしてVPoEレベルの人材を見つける、という選択肢がある。
シェアボスには、有名企業でのVPoE経験者や、VPoEという役職ではないがそれに近いマネジメントに携わっていた人材が揃っており、既存のマッチングサービスよりもマッチ度の確実性が高いのが強みである。戦略策定だけでなく実行支援も可能な実務経験者であり、かつコスト面でも戦略コンサルや顧問サービスより導入しやすいという優位性もある。無料相談も行っているので、ぜひご活用いただきたい。