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DXとは
社会のデジタル化が進む中、ビジネスの現場でもデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)の重要性が声高に叫ばれている。
国レベルでも経済産業省が2018年に「DXレポート ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」や「DX推進ガイドライン」公開し、法改正や東京証券取引所の銘柄選定などの整備を通じDX推進に本腰を入れている。
そもそもビジネスの文脈におけるDXとは、デジタル化が浸透する中で産業構造が変化し、外部環境及び競争原理が激的に変化する状況を脅威あるいは機会として適切に捉え、これに対応することである。時にビジネスモデルや組織体制・組織文化までがそのスコープが及ぶ課題である。
DX推進には、経営層からメンバークラスまで一貫したビジョンの浸透と、高いデジタルリテラシーを持ったデジタル人材の確保・育成が言うまでもなく重要だろう。このブログでは、DX人材育成にフォーカスし、そのポイントを解説する。
深刻なDX人材不足
経済産業省のガイドラインでは、日本国内でDX推進ができている企業は、全体の2割程度に留まると指摘されている。この背景は何だろうか。
職務内容に基づいたいわゆるジョブ型雇用が一般化しておらず、解雇規制も厳しい日本企業においては、IT人材の流動性が低いこともその一因だろう。
例えばITエンジニアの約7割はSIerやITベンダー側に所属しており、ユーザー企業側は社内に抱えるIT人材を最低限に留めていることが多い。ユーザー企業、SIerの双方で人材の多様性が低下し、ダイナミクスが欠如した結果、ノウハウ流通や先端技術のキャッチアップで優位性を失う傾向にあると言える。
そんな中で突然DX推進の号令が出されても、社内にも、既存の協力会社にもDXを本質的に理解したプロ人材が存在せず、DXプロジェクトは思うように進捗しないだろう。
また優秀な組織環境がないことが、数少ないDXリーダー層の転職を誘発している。NTTデータ経営研究所の調査では、デジタルエンジニアを率いてDXを推進する”デジタルリーダー“は約半数以上が1年以内の転職を検討しているというのだ。
経済産業省の”IT人材が2018年で22万人、2030年には最大79万人不足する”という試算を見るまでもなく、DXという難易度の高い課題を任せられる人材確保の緊急性は増している。
社内でDX人材を育成するか、社外のDXのプロ人材と連携するか、あるいはその両方を状況に合わせて組み合わせる必要があるだろう。
DX人材育成の事例
国内の主要企業でも、DX人材の育成は急ピッチで進んでいる。以下で大規模なDX育成を推し進める事例として3つの企業を紹介する。
・ソフトバンク
2017年に、主に営業や企画分野で活躍していた120名の人材が集められ、「DX本部」を設置。様々なアセットや新しいビジネスモデル、最先端のテクノロジーを用いてパートナーと協業して事業を立ち上げたり、パートナーの事業の高収益化を目指す組織だという。DX本部では、デザイン思考やビジネスプランニングなど、新事業創造に必要な能力を強化する人材育成を行い、DXに必要な知識を整理し、大規模なIT研修も推進している。
・ヤマトホールディングス
2021年1月に発表した中期経営計画「Oneヤマト2023」に伴い、デジタル化の司令塔になる「デジタル機能本部」が発足。部門に分かれていたIT関連組織を1つに集約し、ヤマトグループのデジタルトランスフォーメーション(DX)を後押しする体制にした。またデジタル人材の育成へ向け、「Yamato Digital Academy」を開始し。“経営層を含む社員のデジタルリテラシーの底上げと、デジタル人材の早期育成を図るための教育プログラム”という位置付けで、3年で1,000名規模のグループ社員の受講を見込んでいるという。
・ダイキン工業株式会社
「専門性を有し、考え実行し、関係者を巻き込んでいくことができ、AI・IoT技術を駆使できるイノベータ人材」を具体的な人物像としたDX推進人材を育成するために、社内講座「ダイキン情報技術大学」を開講。大阪大学を中心とした教育機関、先端研究機関などの講師を招き、数学などの基礎知識からプログラミング、機械学習やAI応用まで幅広い教育を行うという。管理職、既存社員、新入社員までが広く対象となり、2021年度末には1,000人のAI・IoT人材を育成することが目標として、取り組みが進んでいる。
「DX人材」6つの職種と必要スキル
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、『デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査』の中で、DX推進を担う人材の6職種を以下のように例示している。ここでは必要なスキルセットの概説とともに紹介する。
①プロデューサー
DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む)。
広範やITリテラシー、外部環境の把握をベースにITビジネス戦略の立案、企画、リーディング、組織づくりを含めたマネジメント、といった統括力が求められる。
②ビジネスデザイナー
DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材。
ITトレンドを理解した上で、市場のニーズを検知し、着想力を活かし、企画・ファシリテーションを通して中心的にDXプロジェクトを推進するスキルが求められる。
③アーキテクト
DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材
先端の技術トレンドを理解し、ビジネス課題をITソリューションに落とし込み、アーキテクチャ、インフラやアプリケーション設計、クラウドサービス活用を担う。設計技法、標準化や再利用の力も求められる。
④データサイエンティスト/AIエンジニア
DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材
データサイエンスをベースに、ビッグデータ活用、AI活用といったデータエンジニアリングを担うスキルが必要。
⑤UXデザイナー
DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材
デザイン思考ベースに、UI/UXのプロとしてWEBデザイン、WEBサイト設計を通してユーザーとの適切なコミュニケーションを創出する力が求められる。
⑥エンジニア/プログラマ
上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材
ITスキル標準(ITSS)が定めるITスペシャリスト、及びアプリケーションスペシャリストのスキルセットが求められる。
またこの調査では、6つの職種の中でもプロデューサーやビジネスデザイナーといった、エンジニアやデータ人材を率いるリーダー/マネジメント人材の不足がアンケートデータを基に説明されている。一方で職種ごとの充足方法を答えるアンケートを見ると、特にプロデューサーとビジネスデザイナーの2職種は「既存の人材からの育成」するという回答が8割を超えており、”社内での育成が必要な役割だが、育っていない” という現状が浮き彫りになっている。
h2:DX人材育成のポイント
DX推進者の育成を考える上で重要なポイントを以下で紹介したい。
1. DXのビジョンが社内に浸透している
『DX推進ガイドライン』でも、その冒頭に『(1)DX 推進のための経営のあり方、仕組み』を配置し、その第一項として『1. 経営戦略・ビジョンの提示』を記載していることからも、経営層からDX戦略・ビジョンが社員に共有されていることが重要視されているとわかる。全社的なDXへのコミットが、DX人材育成の第一歩といえるだろう。
2. 動的なDX人材育成計画の策定・育成ターゲットの選定
4年に1度パラダイムシフトが起こるデジタルビジネスの世界では、外部環境の変化に対応できる柔軟な組織体制、組織文化が求められる。DX人材の育成計画は「必要な人材を動的に調達して、適所に配置する」ダイナミックなリソースマネジメントの一環として考えるべきだろう。育成ターゲットもそのような動的な環境にアジリティ高く対応できる柔軟な人材が選定されるべきだろう。
3. DXを実践できるOJT環境の整備
三菱総合研究所の調査では、「座学によるスキルセット・マインドセットの習得」「OJTによる実践力強化」「(社内外との)ネットワーク構築」の三つの方法をバランスよく取り入れることがデジタル人材育成において重要だと説明している。環境変化の影響を強く受けるDX人材の育成においては、座学のみではトレンドの早い変化に追いつけず、また現場感覚も身につかないだろう。育成を外部に丸投げせず、緊張感のある実践の場を社内に用意できるか否かが重要になってくる。
4. DX推進のプロが育成に関わる
実践的な学びが重要なDX人材育成において、ハイレベルなDXプロジェクトを経験した人材と共に働くことは大きな成長機会となるだろう。しかし国内の非IT企業はもちろん、IT企業と呼ばれる企業においても、戦略的にDXプロジェクトが推進され、成功した事例は多くない。必然的にそこに携わった人材も少ないわけだが、それらの成功事例の中で中心的に働いた経験を持つレアなDX人材をいかに採用、もしくは協業できるかが人材育成においても重要になるだろう。
DX人材の育成にシェアボスという選択肢
DX人材の育成ノウハウを持つ人物は、伝手を使って探したり、エグゼクティブマッチングサービス/ヘッドハントを使って探す方法が考えられるが、そもそも対象となる人材の母数が小さいため、なかなか希望にあった人材が見つかる・マッチングすることは難しい。
そこでおすすめなのがシェアボスである。シェアボスはハイレベルなDXプロジェクト経験者を月2回からアサインできるため、採用より早くて確実だと言える。また、実務経験者が揃っていることも特徴で、シェアボスの経験豊富なプロ人材に教育プロジェクトを委ねるという手段もある。一回のアドバイスが15万円からとリーズナブルで、無料相談も可能なのでぜひ一度ご検討いただきたい。